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16- D- 0140 201 6 年 5 月 3 1 日
総合重機各社の 16/ 3 期決算の
注目点
総合重機6 社(住友重機械工業(住友重機械)、三井造船、日立造船、三菱重工業(三菱重工)、川崎重工 業(川崎重工)、IHI)の 16/ 3 期決算および 17/ 3 期業績予想を踏まえ、株式会社日本格付研究所(J C R)の 現況に関する認識と格付上の注目点を整理した。
1.
業界動向
総合重機各社の事業環境は厳しくなりつつある。船舶海洋分野では、過年度の円安や各種規制前の駆け込 み需要を背景に新造船の受注残高が積み上がったものの、ドル建て取引が主体である中、円安局面の転換が 収益の足かせになりかねない。また、足元の受注環境は再び大きく冷え込んでおり、新造船市場に存在する 需給ギャップ(供給過多)という構造的な問題も解消されていない。加えて、近年、各社が注力してきた海 洋資源開発関連も、原油安やブラジル国営石油会社ペトロブラスの汚職問題の影響を受け、事業環境が悪化 している。
航空宇宙分野では民間航空機関連の好調が 16/ 3 期も持続し、同分野が総合重機大手の収益を引き続きけ ん引したとみられる。三菱重工と川崎重工はボーイング向けの分担生産品、IHI はボーイングやエアバスの 航空機に搭載されるエンジン向けのモジュールや部品が代表的な製品であり、これら製品の販売が好調だっ た。IHI などが手掛けるエンジン関連の製品は新設用に加え、スペアパーツ用の需要もある。ただ、17/ 3 期 は民間航空機関連の事業環境も厳しくなるとみられる。16/ 3 期まで円安メリットを享受してきたが、円安局 面の転換が収益の押し下げ要因になる見通しである。また、17/ 3 期は新機種への切り替えに伴う影響が収益 の圧迫要因になる可能性もある。ボーイング向けの分担生産品では主要な収益源である B777 向けの減少が 示唆されている。航空機エンジン関連では、新製品立ち上げ時の採算が厳しい中、エアバス向けのV 2500 が PW1100G に切り替わってきている。一方、三菱重工が量産を目指す小型ジェット機 MRJ は、15年 11月に 初飛行が実現したものの、量産初号機の納入スケジュールは17年第 2四半期から 1年程度先送りになった。 これにより、競合先であるエンブラエルに対する競争優位性が希薄化する可能性がある。
陸上分野の事業環境は従来からまだら模様の部分があったものの、新興国経済の減速や円安局面の修正な どを受け厳しさが増しつつある。景気感応度が比較的高い量産機械系の事業が新興国経済の減速を受けてい る他、原油安の影響で資源開発関連も逆風が吹いている。
2.
決算動向
16/ 3 期の受注高は 6 社合計で 9. 5 兆円(前期比 7. 0%減)と 3 期振りに減少した。分野別では新造船や海 洋資源開発関連といった船舶海洋分野の減少が目立った。一方、17/ 3 期の受注高は、M&A による寄与など もあり、6 社合計で 10.1 兆円(前期比 5. 7%増)と増加に転じる予想である。
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16/ 3 期末における6 社合計の財務構成は、自己資本比率が 28. 4%(前期末29. 3%)、DE Rが0. 70 倍(同 0. 67 倍)となった(有利子負債は社債・C P・借入金を対象)。財務構成はこれまで改善基調にあったものの、 16/ 3 期末は停滞感が強くなった。積極的な設備投資・投融資などを背景に有利子負債が増加する一方、特別 損失の計上で純利益が押し下げられたことや、円高・株安などの影響による自己資本の目減りも響いた。
3.
決算に
お
け
る
格付上の
注目点
16/ 3 期は、6 社合計で増収・減益になったものの、個社別の方向感は分かれた。三井造船と IHI の 2 社は 営業減益であり、純利益も減益だった。一方、住友重機械、日立造船、三菱重工、川崎重工の 4社は営業増 益となった。このうち、三菱重工と川崎重工の 2社は過去最高の営業利益を連続更新したものの、2 社とも 純利益は減益であり、特に三菱重工の減益幅が大きかった。こうした各社の 16/ 3 期決算を左右したのが、 受注管理・プロジェクト管理の甘さに起因する損失計上の状況であった。これらの損失は事業環境の厳しい 船舶海洋分野で多く計上されている。
三井造船は海洋支援船の建造に係る設計変更、工期遅延などに伴う損失計上が営業利益を大きく圧迫した。 海洋支援船の引き渡し時期は17/ 3 期中であり、まだ引き渡しは終わっていない。IHI は、ドリルシップ船体 建造工事、F PSO 船体建造工事、L NG 船用 SPB タンク建造工事の工程混乱による採算悪化や、ボイラ工事で 発覚した溶接部位不適合に係る補修費用の計上などで営業利益が大きく圧迫された。これらの多くの工事は まだ完了していない。加えて、当該ボイラ工事やトルコのイズミット湾横断橋建設工事に係る契約納期遅延 費用 446億円を特別損失に計上し、純利益が大きく押し下げられた。三菱重工は客船建造に係る設計作業や 建造工程の遅れなどを理由に関連損失 1, 039 億円を特別損失として計上し、純利益が大きく圧迫された。同 様の損失を 15/ 3 期に 695 億円、14/ 3 期に641 億円計上しており、客船建造に係る特別損失は累計で2, 300 億円強に膨らんだ。1 番船はすでに引き渡したものの、2 番船の建造がまだ残っている。また、全社収益に 与えるインパクトは大きくなかったものの、住友重機械や川崎重工でも同様の事例があった。住友重機械は 環境・プラント部門の特定工事で工期遅延などに伴う損失が発生し、同部門の主要な営業減益要因となった。 加えて、本件に関連して損害補償費用 14 億円を特別損失として計上した。川崎重工はオフショア作業船の 建造に係る損失計上が船舶海洋部門の営業赤字要因の一つになった。なお、これまで述べた事例とはやや性 質が異なるものの、川崎重工は海洋資源開発関連のブラジル合弁会社における資金繰り・財政状態の悪化を 理由に、ブラジル合弁事業関連損失として 221 億円を計上した(特別損失 192 億円、営業外費用 28 億円)。 総合重機業界では、過去に長納期受注型事業で多額の損失を計上し、リスク管理・プロジェクト管理を強 化してきた経緯があるものの、依然として、こうした対応が十分ではないことを示唆する決算内容になって いる。各社が事業成長を志向する中で、十分な知見やノウハウを有しない事業領域に進出したことの弊害も 一部に出ている。J C R は、前述した不採算プロジェクトの動向とともに、長納期受注型事業の受注時採算、 コンティンジェンシーの織り込み度合い、リスク管理態勢の整備状況などを継続してフォローしていく。
一方、総合重機大手の 16/ 3 期決算では、民間航空機関連を中心に航空宇宙分野の好調が持続した。民間 航空機関連は近年、各社の収益を大きくけん引してきた事業である。しかし、前述したように、17/ 3 期は民 間 航 空 機 関 連 の 事 業 が 減 速 局 面 を 迎 え そ う だ 。 川 崎 重 工 は 、 航 空 宇 宙 部 門 の 17/ 3 期 営 業 利 益 を 前 期 比 45. 2%減の 250 億円と予想、IHI は航空・宇宙・防衛部門の 17/ 3 期営業利益を前期比 38. 4%減の 360 億円と 予想するなど、大幅な営業減益が想定されている。三菱重工も交通・輸送ドメインに属する民間航空機関連 について減収見通しを示唆している。17/ 3 期は事業環境が総じて厳しくなりつつある中で、民間航空機関連 の減速影響を他事業で凌ぐ必要がある。
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大きな損失を計上している。これまで、総合重機業界全体として、有利子負債の削減と自己資本の積み増し により財務構成を継続的に改善させてきたが、こうしたトレンドを今後も持続できるか注目していく。
(担当)涛岡 由典・関口 博昭
(図表 1)各社の受注高と収益 (単位:億円)
決算期 受注高 売上高 営業利益
親会社株主に帰属
する当期純利益
住友重機械工業 (6302)
15/ 3 期 7, 408 6, 671 460 243
16/ 3 期 6, 859 7, 008 506 331
17/ 3 期(予想) 7, 100 7, 000 470 280
三井造船 (7003)
15/ 3 期 9, 598 8, 165 133 95
16/ 3 期 6, 096 8, 054 118 76
17/ 3 期(予想) 9, 000 7, 500 220 210
日立造船 (7004)
15/ 3 期 4, 528 3, 593 128 51
16/ 3 期 4, 354 3, 870 151 58
17/ 3 期(予想) 4, 500 4, 000 160 60
三菱重工業 (7011)
15/ 3 期 46, 991 39, 921 2, 961 1, 104
16/ 3 期 44, 855 40, 468 3, 095 638
17/ 3 期(予想) 50, 000 44, 000 3, 500 1, 300
川崎重工業 (7012)
15/ 3 期 17, 130 14, 861 873 516
16/ 3 期 16, 937 15, 411 960 460
17/ 3 期(予想) 15, 000 15, 700 700 490
IHI (7013)
15/ 3 期 16, 644 14, 558 633 91
16/ 3 期 16, 053 15, 394 220 15
17/ 3 期(予想) 15, 000 16, 000 650 300
6 社合計
15/ 3 期 102, 298 87, 770 5, 188 2, 100
16/ 3 期 95, 155 90, 206 5, 050 1, 580
17/ 3 期(予想) 100, 600 94, 200 5, 700 2, 640
(出所:各社決算資料より J C R 作成)
(図表 2)各社の財務 (単位:億円、%)
企業名 決算期 自己資本 有利子負債 自己資本比率
住友重機械工業
15/ 3 期末 3, 601 836 45. 8
16/ 3 期末 3, 766 682 48. 1
三井造船
15/ 3 期末 2, 367 1, 883 22. 0
16/ 3 期末 2, 348 2, 399 21. 5
日立造船
15/ 3 期末 1, 088 1, 182 26. 6
16/ 3 期末 1, 142 1, 041 28. 4
三菱重工業
15/ 3 期末 17, 808 9, 756 32. 3
16/ 3 期末 16, 798 10, 521 30. 6
川崎重工業
15/ 3 期末 4, 320 4, 121 26. 0
16/ 3 期末 4, 314 3, 967 26. 6
IHI
15/ 3 期末 3, 458 3, 935 20. 5
16/ 3 期末 3, 183 3, 566 18. 6
6 社合計
15/ 3 期末 32, 641 21, 713 29. 3
16/ 3 期末 31, 550 22, 176 28. 4
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【参考】
発行体:住友重機械工業株式会社
長期発行体格付:A 見通し:安定的
発行体:三井造船株式会社
長期発行体格付:BBB+ 見通し:安定的
発行体:日立造船株式会社
長期発行体格付:BBB 見通し:安定的
発行体:三菱重工業株式会社
長期発行体格付:A A - 見通し:ポジティブ
発行体:川崎重工業株式会社
長期発行体格付:A 見通し:安定的
発行体:株式会社 IHI
長期発行体格付:A - 見通し:安定的
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